2008年11月15日土曜日

末期的症状呈する麻生政権 ①政策より政局そのものの定額給付金  青山貞一

末期的症状呈する麻生内閣 ①政策より政局そのものの定額給付金 青山貞一

 朝令暮改、ブレまくる麻生太郎内閣が、案の定、迷走に次ぐ迷走から、ここに来て末期的症状を呈している。 

 民主党のしていることをさんざん「政策より政局」と誹謗・中傷し、自らは「政局より政策」と、ことある度に言い続けてきたのが麻生総理だ。

 しかし、麻生総理ががしていることは一から十まで、まさに「政策より政局」、さらに言えば選挙対策的愚作である。しかも、後述するように、その愚作のために巨額の公金、税金を使っている。

 とりわけ酷いのが「定額給付金」問題だ。麻生総理は、当初一律に給付と明言しながら、二転三転、閣内はもとより自民党の有力代議士からも批判が頻発し、挙げ句の果ては自治体に丸投げとなった。

 当然のこととして自治体側は大迷惑だ。どの首長も単なる迷惑であることを超え、怒っている。

 そもそも、まさに公職選挙法違反すれすれの政権による金ばらまき選挙対策と言っても過言でない2兆円ものバラマキを経済対策、不況対策の目玉として提案したのは、麻生総理自身であった。にもかかわらず、高所得者には給付しないとか、高額所得者には自主的に辞退してもらうとか、1800万円以上には給付しないなど、迷走に次ぐ迷走となった。

 挙げ句の果ては、給付の窓口となる自治体が自ら給付方式を決めて欲しいということになったのだ。 

 そもそも安倍、福田と一年ぽっきりで政権を投げ出した自民・公明の政権が選挙管理内閣として苦肉の策として、出来レースそのもので選んだのが麻生太郎内閣だ。当人は「文藝春秋」で臨時国会冒頭解散を宣言していた。

 にもかかわらず、自民党本部が行っている総選挙結果を予想する調査で民主党に負けていることが次々に分かるや、まさに「政局より政策」として、金融危機や株価下落など経済対策を優先するとして、次々に総選挙を先送りしてきた。

 何のことはない、麻生総理そのものが、いかに「政策より政局」に邁進し、保身的に総選挙を先送りしてきたのだ。 その結果、政権政党はこの間、愚作のアホ丸出しの「定額給付金」問題で迷走するだけでなく、自治体を含め膨大な時間を浪費してきた。

 何と言っても首相始め閣僚、首長など高額所得者がこの間、自民党の選挙対策のために公金、税金を使うという前代未聞のトンデモ策に膨大な時間を費やしてきたのである。

 当然、自治体の首長、関係者を含めれば数1000人に及ぶ高額所得者が、「定額給付金」問題をどうするかについて時間を費やしてきたのだから、そのための社会的費用は膨大である。

 ここで社会的費用を簡単にシミュレーションしてみよう!

 仮に首相、内閣、代議士、首長、副知事、助役など全国で約4000人の高額所得者が5日間にわたり「定額給付金」問題に腐心してきたとすれば、1日の歳費、報酬を平均7万円として、4000人×7万円×5日間=14億円となる。ただしここでは首相から助役までの1日当たりの平均給与を年収から逆算し7万円とした。

 さらに今後、給付の窓口とされる自治体がこの愚作を具体的に実施するとなると、一市町村で平均100人の職員が1週間係わることとなれば、職員一人の一日の平均給与を2万円とし、1800市町村×10カ所×30人×7日×2万円=756億円となる。 ※一説による政府は給付のための各種経費を1000億円  を超えない範囲と、すでに巨額の経費がかかることを認め  ているようだ。

 これらは言うまでもなく血税から支払われることになるから、公職選挙法違反すれすれの自民・公明による「選挙対策のバラマキ」(鳥越俊太郎氏、14日の報道ステーションでの発言)のために国、地方の税品が数100億円支払われることになりかねないのだ!

 もし、自治体がいくら迷惑がっても、この愚作を実施すれば、地方自治法の監査請求、住民訴訟が頻発する恐れがある。いうまでもなく監査請求、住民訴訟は、公金の不正、不当な使用に対する訴訟だ! しかも、麻生総理の思いつきではじまったこの「定額給付金」愚作は、結果的に自民・公明の選挙対策になるどころか、麻生政権の内閣支持率をさらに下げさせ、かつ有権者の自民党離れを加速化させることになっている。

 事実、各新聞社などの世論調査によれば、「定額給付金」問題に限らず、朝令暮改でブレまくる麻生政権への支持率は、当初から安倍、福田政権より低かったが、ここに来てさらに下がり、自民党への支持率も民主党より低くなっている。

 すなわち、有権者、国民は、仮に10000円なり12000円をもらったとしても、それはそれ、決して自民・公明に買収されないことが明白になってきたのである。

 その重要な理由は、いうまでもない単に「定額給付金」問題が迷走しているからだけではない。3年後に消費税を上げると麻生総理が明言したことにある。 麻生総理はこれについても、相変わらず前言を覆すような発言をしているが、国民は小泉を含め4代続いている世襲で世間知らずな内閣の言うことにヘキヘキとしている。国民は、衣の下に鎧を見ているのだ。

 いうまでもなく2兆円があれば、もっともっと有意義に使う政策、施策は腐るほどあるはずだ。

 ところで、この「定額給付金」問題の極めつけとして、総務省は、「定額給付金」を装う振り込め詐欺に注意をという注意乾期を始めたという。まさに笑止千万だ。

 「政局より政策」としてはじまった自民・公明の国費を選挙対策に使うような対策が、振り込め詐欺の一因となるとして、総務省が警告を出したというのだから何をかいわんやである。 いずれにせよ、与党に甘く、野党に厳しい日本の大マスコミも、さすがにこの「政策より政局」そのものの定額給付金問題には、一斉に「フザケルナ」という論調となっている。自公政権にとっては、まさに自公ならぬ自業自得だ。

◆「給付金」装う振り込め詐欺に注意を 総務省

 総務省は14日、定額給付金の給付手続きを装った「振り込め詐欺」を防ぐため、ホームページで注意喚起を始めた。同省や自治体職員をかたり、電話でATM操作を指示したり、実際には生じない「手数料」振り込みを求めたりするケースなどを挙げ、そうした手続きを政府や自治体が求めることはないと強調している。

 「給付は早くても来年3月から」(同省関係者)だが、既に給付が始まったと誤解している人も多く、住民への連絡や給付手続きは始まっていない点も注意喚起した。

 市区町村判断で設ける可能性がある所得制限についても、「高額所得者なので、この口座まで返金してください」といった手口もあり得ると総務省は警戒している。日経新聞(1008年11月14日 23:58)
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2008年11月12日水曜日

イタリア経済とマフィア~消費税より高い「みかじめ料」   青山貞一

 この2月、ひさびさにイタリアにでかけたが、成田空港の銀行で1ユーロが170円を超えていたこともあるが、イタリア、とくにローマの物価の高さにへいこうした。

 たとえばローマ空港の公式両替で両替したとき、通常の手数料以外にも訳の分からぬ手数料がついていて、結局1ユーロ200円近くとなった。

 さすがに地下鉄や鉄道、バスなどの公共料金や博物館入場料などは、問題なかったが、空港やテルミニ駅、さらに町中で売っている清涼飲料水はベラボーに高い。

 たとえば日本で1本高くても150円で売られている500ccのコーラなどの清涼飲料水は2-3ユーロ、もし1ユーロが200円なら400~600円もする。単なる水でも500ccのペットボトルで2ユーロしていた。

 ちょっと気の利いたレストランでは、昼食が一番安いビジネスランチでも1600円以上、ディナーとなると、簡単に一人当たり5000円から10000円となる。もちろん、たいした店でなくてこれだ。

 私たちはローマの初日に窃盗にあい相棒がスッテンテンになったこともあって、旅行中、出来る限り質素倹約につとめたのだが、それでもローマの物価には驚くばかりだった。

 ホテルもテルミニ駅蕎麦の相当ボロで狭いホテルでも、90~120ユーロはする。15000~20000円と言ったところだ。もちろん立派な由緒あるホテルならまだしも、木賃宿に毛の生えたようなところでもこのありさまだった。

 これはナポリでも似たり寄ったり、ソレントでやっと少し良くなったが、やはり生活実感からして、飲食がらみが高いと感じていた。
 .....

 日刊ゲンダイの2008年11月13日号を読み、イタリアの物価の異常に高い原因が氷解した。記事のタイトルは「イタリア、マフィアが最大のビジネス、売り上げ15兆円」。

 イタリア国内の最大ビジネスは、フェラールでもフィアットでも、さらにアルファロメオでもなく何とマフィアが一番の売り上げを稼いでいるというのだ。

 日本ならさじずめトヨタや日立製作所、パナソニック、ソニーといった上場の巨大企業が最大のビジネスとなるが、それでも2008年3月の決算では、日立製作所の売り上げが11兆円、パナソニック(当時は松下電器産業)が9兆、ソニーが8.8兆円と、イタリアのマフィアには遠く及ばないのである。

 ではイタリアのマフィアは、どんな手口で15兆円もの売り上げ?を得ているのだろうか?

 イタリアの流通業界団体が11月11日に出した犯罪組織に関する調査報告書によれば、マフィアは年間約1300億ユーロ、日本円で約15兆8600億円もの売り上げを上げているという。

 同報告書によれば、マフィアは、ナイトクラブ、レストラン、精肉・鮮魚市場などに対する「みかじめ料」や「高利貸し」で何と、国内総生産の6%に相当する額を稼いでいるというのだ。

 もちろん、それ以外に麻薬取引、暗殺、密輸、密造、共謀、恐喝及び強要などの刑事犯罪に通ずる行為やカジノ、博打的なものもあるが、ひとびとの生活や観光客に関連したものが多いことが分かった。

 さらにローマではいたるところにスリや窃盗団がいるが、それらもすべてではないが、マフィアに関係していたり、「みかじめ料」の対象となっている。  そういえば、私たちがローマで経験した両替率の異常さ、レストランや飲食料の高さはいずれもこの「みかじめ料」も帰因しているのだろう。

 同報告書は、金融危機を背景に銀行が貸し渋りに動けば、マフィアによる高利貸の被害が増える恐れがあると指摘している。

 それにしてもマフィアの年間売り上げが15兆円にはおどろいた。 

2008年11月8日土曜日

悪夢のブッシュ政権八年、腐っても鯛の米国と腐り切る日本   青山貞一

 米国と言えば、ブッシュ大統領の8年、とくに2001年9月11日以降の米国は、単独行動主義を鮮明にしアフガン、イラクに大量の軍隊を英国などを巻き込み投入した。

ブッシュ政権は、大統領自身がそうであるように石油、天然ガス利権に満ちた閣僚が多数存在していた。 かくしてブッシュ政権の8年は、米国民のみならず世界各国のひとびとにとって、まさに悪魔の8年であったに違いない。 

 米国だけでなく世界各国を巻き込み対テロ戦争として行われたアフガンそして、イラク戦争は、なんのことはない、エネルギー新植民地主義、さらにエネルギー新帝国主義とでもいえる侵略戦争の様相を強めただけであったと云っても過言ではないだろう。

◆青山貞一:長編コラム 正当性なき米国のイラク攻撃
◆青山貞一:エネルギー権益からみたアフガン戦争、「世界」、岩波書店 

 当初、サブプライムローンは、一見して米国の低所得者層への住宅政策のように思われた。しかし、2006年にサブプライムローン債権が価格下落に転じ、2007年になって世界的にサブプライムローン問題が顕在化するに及び、このサブプライムローンシステムがけっして低所得者層に住宅を提供するための政策などではないことが分かったのである。

 それは私利私欲のために世界各国をアフガン、イラク戦争に巻き込んだブッシュ大統領や閣僚が、挙げ句の果てに抱え込んだ米国の財政赤字解消戦術と無縁ではない。

 ブッシュ政権は、巨額の戦費を拠出するためにバブル景気、それも実体経済と無縁にカネを捻出する金融資本主義的バブルを徹底して推し進めてきたのである。

 そして2008年春に始まったサブプライムローンバブル崩壊に端を発する株価の激落は、機関投資家を先物原油や先物穀物への投資に向かわせた。その結果、本来1バレル当たり50-60米ドルであった原油を7月には150ドル弱まで暴騰させたのである。エネルギー権益に満ちたブッシュ一族は実はここでも利権を得ていたのである。

 本来、世界中の生活や生産のもととなる原油を投機の対象としたWTI先物原油へのヘッジファンドなど機関投資家のカネの集中を米国政府は監視し、規制すべきであった。実際、米国下院の民主党はそのような法案を提出していたが、ブッシュ政権は法案化を阻止し、それがきっかけとなり先物の原油や穀物価格は暴騰したのである。

◆青山貞一<緊急報告0>外交なき「油上の楼閣」ニッポンの行く末は暗澹 

 同時期、ブッシュはガソリンにエタノールを混合させる燃料をトウモロコシなど穀物を原料に製造する政策を具体化した。その結果、先物穀物価格が暴騰し、それに端を発した食物価格の高騰は、貧しい途上国の人々だけでなく、格差社会のもと日々の生活もままならない人々を直撃した。

 ブッシュがアル・ゴアと闘った大統領選で間違って当選したブッシュだが、その後の8年を見ると、ブッシュがしたことの多くは、無謀な規制緩和による大企業や金持ち優遇、中東の天然ガスや石油を世界を巻き込む侵略戦争による搾取、そのための巨額の戦費による財政悪化、挙げ句の果ては米国初のサブプライムローンのシステム崩壊による世界的金融、経済危機の招来と、踏んだり蹴ったりであった。

 これは世界各国に対し劇的な悪影響をもたらすだけでなく、本場米国の国民にあっても同様だったはずだ。ごく一部の富裕層や金融バブルの恩恵を受けたものを除けば、圧倒的多くの米国民にとっても悪夢の8年であったに違いない。

 ......

 そんなブッシュ政権にひたすら追随、盲従してきたのが日本だ。 米国の巨額な戦費を米国債の購入だけでなく、アフガン、イラクへの戦後復興の名の下での巨額財政支援を積極的に行ってきたのは小泉総理以来の日本である。

 ところで、周知のように日本では小泉氏がマスメディアを使って行った情報操作による世論誘導による郵政民営化選挙で衆議院議員の2/3に迫る議席をとって以来、ブッシュ政権への盲従をさらに強めた。

 小泉氏は政権途中で安倍、福田に総理の座を実質禅譲した。しかも正当性も正統性もない安倍、福田政権は、それぞれわずか1年で政権を放り出し、その後、またまた実質禅譲によってトンデモの麻生政権が誕生した。この間、一切総選挙はない。

 民主主義の根幹をなす民意を無視し、ひとたび世論操作で得た多くの議席をもとに、小泉、安倍、福田、麻生の各政権はブッシュ政権同様日本を壊してきたのである。 これら小泉、安倍、福田、麻生の各政権に共通していることといえば、いうまでもなく二世、三世の国会議員である。まさに「親の七光り」そのものである。

 国会議員としての資質をもっているとは思えない三百代言的政治家、小泉氏、幼稚で稚拙な右翼思想をもった安倍氏、それにまったくリーダーシップをもたない不作為の福田氏、どれも首相、総理以前に国会議員としても不適格者と言われても仕方ない人ばかりだ。

 日本はブッシュが政権にいた8年の間、そんなトンデモの宰相を総理としてきたのである。親の七光り、二世、三世、さらに安倍、福田、麻生に至ってはまったく国民の審判を得ないで総理となった「日本の民主主義の民度を象徴する人物」である。

......

 ブッシュによるやりたい放題、悪夢の8年を米国や世界は経験したが、そこはチェック・アンド・バランスの国、「腐っても鯛」である。 昨日、バラク・オバマ氏が圧倒的大差で第44代の米国大統領に当選した。 オバマ氏はアフリカ系黒人の血を引く政治家だ。オバマ氏はわずか上院議員一期で黒人初の米国大統領になった。

 コロンビア大学、ハーバード大学ロースクールを卒業した弁護士でもあるというから、エリートには違いないが、米国民が選んだ米国のリーダーである。 米国は建国以来の危機にあることは間違いないが、その頂点で親の七光り、二世、三世でもない、しかもアフリカ系黒人をリーダーに選んだのである。

 腐っても鯛の米国、およそ民主主義から程遠い世襲で民意をまったく反映しない総理をいただく日本。 日本でも大統領制をと言いたいところだが、最低限すぐさま総選挙を実施して欲しいものだ!