2010年12月25日土曜日

大メディアがいかに恣意的な小沢報道をしているかがよく分かった


 2010年12月23日の夕方、小沢一郎議員がインターネット動画のUstreamとニコニコ動画でフリージャーナリストの岩上安身氏の約1時間に及ぶロングインタビューに応えた。

 インタビューの詳細は以下をご覧いただきたい。前回、ニコニコ動画で1時間半に及ぶロングインタビューに応えたとき以上に、小沢一郎議員の本音が語られた。とくに米国、中国、北朝鮮、イラク、アフガンなどの外交問題ついて多くの時間を割いて日本国内側の裏事情を話されたのは圧巻であった。

小沢一郎議員ロングインタビュー全容
◆Ustreamのアーカイブ

◆小沢一郎ロングインタビュー全容(テキスト)
左が岩上安身氏、右が小沢一郎元民主党代表


 ぜひ上の小沢一郎議員インタビューのすべてを聞いて欲しい。

 ところで大メディアがこれをどう報じたかは、非常に興味あるところである。

 というのも、小沢議員が言うように、大メディアは小沢氏に関しては、「政治とカネ」問題一辺倒の集中豪雨的な報道、それも何が政治とカネに関わる個別具体的な問題であるかについて報道せず、どの大メディアも護送船団的に繰り返し、「政治とカネ」を喧伝し、何ら小沢氏の政治論、政策をまともに報道してこなかったからだである。

 オランダのウォルフレン教授や江藤淳氏の言を借りるまでもなく、小沢氏ほど日本の政治家で理念、政策をリアリティをもって語れる政治家はいない。いかなる分野であっても、自身の言葉で理路整然かつ具体的に語れる政治家はいない。

■ウォルフレン氏の「小沢一郎論」
『小沢は今日の国際社会において、もっとも卓越した手腕を持つ政治家のひとりである。ヨーロッパには彼に比肩し得るリーダーは存在しない。政治的手腕において、そして権力というダイナミクスをよく理解しているという点で、アメリカのオバマ大統領は小沢には及ばない』
(アムステルダム大学教授、カレル・ヴァン・ウォルフレン)

■江藤淳氏の「小沢一郎論」
『小沢氏というのは不思議な政治家で、要するに政策を実現することが第一義、そのために自分がいつ総理になるかは二の次の課題であって、現在、輿望を吸収出来る人物が羽田孜氏であれば羽田さんを担ぐ。誰が総理になるかならないかは二の次の問題、政策の実現こそが緊急の課題だということをハッキリと打ち出している人間が出てきたということは、戦後日本の政治史上まことに驚くべきことだと言わざるを得ない。』
(文芸評論家、元東京工大教授・江藤淳) 
 その小沢氏がひとりで一時間、岩上氏の質問に応えたのだから、情報リテラシー能力があれば、膨大かつ重要な情報が得られるはずである。

 事実、今回は外交、防衛を中心に、日本が向かうべきビジョン、方向性について語ってくれた。

 しかし、どうだろう。一時間のインタビューを伝える大メディアの記事は、以下に示すようにきわめて恣意的かつ断片的なものである。朝日新聞に至っては<特落ち>というか、インタビューを無視し一切記事にしていない。実に大人げないことだ。

 これは大メディアがこと小沢氏については大人げなく感情的になっていること、表層的で本質から離れた誹謗中傷を繰り返してきたこと、つまみ食い的にごく一部を報道していることの証左であると言える。

 さらに言えば、1時間に及ぶ含蓄ある言説から以下の記事にあるような末節や政治や政策ではなくことさら政局に結びつけていることも、いかに今の大新聞記者の劣化がどうしようもないところにまで来ているかを示すものであろう。

読売新聞
小沢氏、中国主席と会談していた…11月横浜で

 民主党の小沢一郎元代表は23日、インターネットの番組で、衆院政治倫理審査会(政倫審)への対応について、「(小沢氏の資金管理団体の政治資金規正法違反事件は)司法の手続きに入っているから、立法府が同時並行で同じようなことをやるのは、三権分立の精神から言うと筋違いだ」と述べ、出席しない考えを改めて強調した。

 「(政倫審に)出席しないことが障害となって野党が審議拒否するとか、選挙に負けるのであれば出る。ただ、現実には違う問題で野党はいろいろ言っている」とも語り、問責決議が可決された仙谷官房長官らの続投に問題があるとの考えを示唆した。

 また小沢氏は、11月に横浜市で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際、中国の胡錦濤国家主席と会談していたことを明らかにした。「(胡主席が)『会いたい』というから(会った)。僕は、儀礼的な社交辞令で会うのは嫌いだから『結構だ』と言ったのだが」と経緯を説明したうえで、会談では胡主席に「(中国は)変わらないとだめになる」と述べ、中国政府の統治手法に限界があるとの考えを伝えたという。
(2010年12月23日21時10分 )


毎日新聞
小沢元代表:菅政権批判「早晩、見放される」 動画番組で

 民主党の小沢一郎元代表は23日午後、インターネットの動画番組で、衆院政治倫理審査会への出席について「野党は私の問題より、もっと違う問題を言っている。私が出ても国会審議がスムーズにいく状況ではない」と拒否する考えを改めて示した。

 小沢氏は菅政権について「このままでは早晩、国民から見放される」と批判。岡田克也幹事長についても「彼は国会運営であらかじめ野党と話し合うべきではないと言っている」と国会運営の手法に疑問を呈した。

 一方、岡田氏は23日夜、BS朝日の番組収録で「国会に出てこない選択肢はない」と政倫審出席に応じない小沢氏を非難し、「通常国会が始まるまでにこの問題は結論を出す」と強調した。【葛西大博、影山哲也】
 2010年12月23日 21時01分(最終更新 12月23日 21時49分)


時事通信
船長釈放「禍根残した」=小沢氏

 民主党の小沢一郎元代表は23日のインターネット番組で、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で逮捕した中国人船長を釈放したことについて「(内閣が)事実上命令したんだろうと思う。禍根を残すことになる」と述べ、菅政権の対応を批判した。
 小沢氏は「検事であれ行政官であれ、役人が国際間の重大問題に鑑みて釈放したり逮捕したり、そんなばかげたことはあり得ない」と語った。 
(2010/12/23-22:09)


共同通信
小沢氏、政倫審出席を重ねて拒否 ネット番組で表明

 民主党の小沢一郎元代表は23日午後のインターネット動画番組で、菅直人首相が求める衆院政治倫理審査会への出席について「現段階では私が出ても、国会審議がスムーズに行く状況ではない」と述べ、拒否する考えをあらためて表明した。

 また首相の政権運営について「このままでは、早晩国民から見放される」と批判した。小沢氏が20日の首相との会談後、公の場で政倫審問題について発言するのは初めて。

 小沢氏は中国漁船衝突事件について「中国人船長釈放の記者会見を那覇地検の一官吏に押し付けるのは非常に良くない。事実上、菅内閣が命じたもので、禍根を残した」と指摘した。
2010/12/23 19:23


NHK
小沢氏 動画番組で菅内閣批判

 民主党の小沢元代表は、インターネットの動画番組の対談で、衆議院政治倫理審査会に出席しない考えを改めて示したうえで、菅内閣の政権運営について、「このままだと国民から早晩見放されてしまう」と述べ、批判しました。

この中で小沢氏は「もし私が国会に出ることで、国会の論議がスムーズに行ったり、国民が納得して選挙で支持してくれるのであれば喜んで出ると言っているが、現実的には、私自身の問題よりも、野党はもっと違う大きな問題でいろいろ言っているのではないか」と述べ、衆議院政治倫理審査会への出席に応じない考えを改めて示しました。

 そのうえで、小沢氏は、菅内閣の政権運営について、「約束しても100%すぐできるということはありえない。ただ、財源の不足など現実の壁があるので理想の旗を捨てると言ったら、何のための政権交代か分からず、このままだと国民から早晩見放されてしまう」と述べ、批判しました。

 さらに、小沢氏は、尖閣諸島沖の衝突事件を巡る政府の対応について、「検事であれ、役人が、国際間の重大問題に鑑みて、釈放したり逮捕したりするというばかげたことはありえない。内閣が事実上命じたのだと思うが、禍根を残すことになる。国民を代表する政治家が責任を取らなければならない」と述べました。
12月23日 20時43分
 
 本来、菅総理は小沢氏のこの生インタビューをしっかり聞かねばならないのに、くだんの菅総理は、この日のほぼ同じ時刻、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞の編集委員らと会食していたことが分かった。

午後6時22分、公邸発。同35分、東京・芝公園の日本料理店「とうふ屋うかい」着。星浩朝日新聞編集委員、岩見隆夫毎日新聞客員編集委員、橋本五郎読売新聞特別編集委員と食事。

 すっから菅総理に付ける薬はない!!

 それにしても、星、岩見、橋本など既得権益の固まりみたいな時代の遺物と会食している菅には開いた口がふさがらない! 

 分かったことは、上記の全記事を合わせても小沢氏が一時間話した内容の1/10にも及ばない! まして政治の本質との関連では、1/100にも及ばないだろう。日本国民はまずもって大新聞の購読を止め、思考停止でナンセンスなテレビの視聴を止めるべきだ!

 小沢氏ではないが、こんな情報リテラシーが皆無なマスコミの取材に貴重な時間など費やす必要はない。定期的にインターネットメディアの生のインタビューに対応する方が、よほど国民、有権者にとってプラスになることは間違いないだろう!

 岩上安身さん、大変ごくろうさまでした。

 それにしても、大メディア各紙が岩上さんの名前やニコニコ動画、Ustreamなどの固有名詞を記事中に書かないのは失礼千万きわまりないことだ。

2010年11月6日土曜日

小沢一郎とメディアと法律  青山貞一

私の友人でフリーのジャーナリストは、以前、農水官僚の昇進にあわせ農業系公共事業などで世話になったとされる群馬県の片田舎の新治村の村長が元助役に指示し有力者からカネを集めお礼を贈ったとする記事を日刊ゲンダイに掲載した。
助役は友人のジャーナリストに銀行の通帳まで見せその事実を認めていた。ほぼ同じ内容の論文を岩波書店の「世界」に書いたところ、村長から友人と岩波書店を相手として民事の損害賠償請求訴訟を起された。
一審の前橋地裁では、友人と岩波書店が勝訴したものの、二審の東京高裁で逆転敗訴し、最高裁で棄却され確定、最終的に2百万円の損害賠償請求が確定した。
判決では、「裏付け取材を欠き、筆者が真実と信じる十分な理由はなかった」とし、記事中で村長が元助役に依頼して金を集めたという事実は真実と認めるが、そのカネが農水官僚に渡ったとまでは言えない。にもかかわらず記事を読む読者には農水官僚がもらったように、すなわち黒である印象を与えていることを判決の根拠にしていた。友人のフリージャーナリストは、決して決めつけて書いたわけではなく、疑惑があると書いただけと、今でも述べている(2010年11月6日談)。
◆東京高裁;岩波書店に賠償命令
東京高裁;岩波書店に賠償命令、群馬・新治村長が逆転勝訴(2002年2月6日)「農水省職員の昇進にあわせ、鈴木村長の指示で村職員が村の有力者に声をかけて数百万円のお祝いを贈った」などと、農水省構造改善局にわいろ疑惑があると書いた月刊誌「世界」00年3月号の記事で名誉を傷つけられたとして、群馬県の鈴木和雄新治村長が、同誌を発行する岩波書店(東京都)などを相手に300万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決があった。判決は、「裏付け取材を欠き、筆者が真実と信じる十分な理由はなかった」として、請求を棄却した一審・前橋地裁判決を変更し、岩波書店側に200万円の賠償を命じた。
当時、この判決は、刑事事件に関連することについては裁判が確定するまでジャーナリストは何も書くなと言うに等しいと話したものだった。そして当然、この事件の判決内容は判例となっているはずだ。

もし、その判例をもとに小沢一郎元民主党代表に関する新聞の記事やテレビのニュースを検証すれば、間違いなく、どれもこれも小沢氏にかけられた政治資金規正法に関連する容疑(個別具体に法的に見ればこの容疑は大したものではない)をグレーであるどころか、明らかに黒である印象を与えている。

であればこそ、この間、頻繁に大メディアが行ってきた世論調査、とりわけ2010年初秋に行われた民主党代表選での小沢一郎議員に対する支持が異常に低くなったと言えるのであろう。
今や大メディアの記者の多くに、「社会の木鐸」という言葉はないし、求めるのも無理がある。

本来、取材がメディアの大前提である。だが、こと小沢一郎氏に対しては、ろくに取材をしていない。

私が知る限り、この2年間、夕刊紙である日刊ゲンダイの独占インタビューと今回のニコニコ動画の1時間30分に及ぶロングインタビューをのぞけば、大メディアはどれも小沢氏本人にロングインタビューをしていない(できていない)。
民主党代表選に関連し、テレビ朝日の朝の情報番組と報道ステーションが小沢氏をスタジオに呼びキャスターらの質問に応えたことがあったものの、その場合でも小沢氏の実質発言時間は10分にも満たないものだった。
一方、小沢氏に対する新聞テレビなどの大メディア、さらに週刊誌、夕刊紙の名誉毀損、信用毀損、侮辱的な記事、それも「誰が読んでも書かれた当人が黒である印象を与える」記事や報道は星の数ほどあった。

大メディアは司法当局とか司法関係者によれば、などと記事のソースを書いてきたが、もとより検察、警察は法律や服務規程によって捜査中の情報を外部に漏洩することを禁止されている。そんな司法関係者からのリークをもとにあたかも事実であるかのような情報を、この2年近く連日連夜記事にし、報道してきたのである。

法学部や法科大学院の学生はもとより誰でも周知のように、我が国では憲法や刑事事件訴訟法に規定される「推定無罪」がある。

しかし、この間のメディアの論調をつぶさに見れば、「推定無罪」などどこ吹く風である。みんなで書けば怖くない。みんなで名誉毀損すれば恐くない。検察当局がリークしているのだから怖くないとばかりに、連日連夜、小沢氏の名誉や信用を毀損することに精を出してきたのである。
◆推定無罪 「疑わしきは罰せず」
推定無罪は「何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」という、近代法の基本原則である。狭義では刑事裁判における立証責任の所在を示す原則であり、「検察官が被告人の有罪を証明しない限り、被告人に無罪判決が下される(=被告人は自らの無実を証明する責任を負担しない)」ということを意味する(刑事訴訟法336条等)。広義では、有罪判決が確定するまでは何人も犯罪者として取り扱われない(権利を有する)ことを意味する(国際人権規約B規約14条2項等、「仮定無罪の原則」という別用語が用いられることもある)。
この原則は刑事訴訟における当事者の面から表現されている。これを裁判官側から表現した言葉が「疑わしきは罰せず」であり「疑わしきは被告人の利益に」の表現から利益原則と言われることもあるが、上述の通り、「疑わしきは罰せず」より無罪の推定の方が広い。
日本では、「被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない」と定める刑事訴訟法第336条は、「疑わしきは被告人の利益に」の原則を表明したものだと理解されている。 また、適正手続(due process of law)一般を保障する条文と解釈される日本国憲法第31条の「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」に推定無罪の原則(狭義)が含まれると解釈されている。
もっとも、「無罪の推定」(presumption of innocence)は、「疑わしきは被告人の利益に」(in dubio pro reo)の原則より広く、被疑者・被告人は、有罪の犯人と区別し、むしろ無辜の市民として扱われるべきだという意味として捉えられており(広義の推定無罪の原則、別名「仮定無罪の原則」)、国際的にも定着している。 これは、国際人権規約にも明文化されており、日本も批准している。そのB規約第14条2項は「刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。」と、権利の形で明確に保障している。
日本は「起訴法定主義」ではなく「起訴便宜主義」をとっている国だ。この「起訴便宜主義」により、検察に絶大な裁量が与えられている。しかもその検察には、それこそ説明責任の義務はない。なぜなら法律や服務規程によって情報開示がシャットアウトされているからである。
◆起訴便宜主義
刑事訴訟法248条によると、検察官が必要としないときは、公訴を提起しないことができる、つまり、起訴猶予が認められており、このことから、検察官に広い裁量権が与えられていることが分かる。
このことを起訴便宜主義というが、それに対して、検察官に裁量権を認めないというのが起訴法定主義である。日本の刑事訴訟法は、諸外国と比べ、起訴便宜主義が徹底されている。
起訴便宜主義においては、検察官による公訴権の濫用が発生しうるため、公訴権の行使が権限の濫用にあたる場合には裁判所は訴訟手続を打ち切るべきという「公訴権濫用論」という主張もある。
その結果、検察が起訴し公訴、すなわち公判にもちこめば、99.9....%の事件が有罪になる。だから一旦起訴されれば=有罪となり=罪人となるという図式がメディアで常識となってきた。すなわち、日本では起訴された時点で罪人といういかにももっともらしい言説が流布されてきたのである。

しかし、ここ数年分かったことは、99.9...%のなかに、かなりの無罪が含まれていたことであった。これを冤罪と言う。

そして、ここ数年、日本の捜査、取り調べがいかに無謀なものか、また昔特高、今特捜というべき実態が明らかになってきた。

物理的な拷問ではないとしても、検察自らが描いたシナリオを金科玉条とし、それに達するためには、人質捜査はじめ、やくざ顔負けのありとあらゆる言論暴力、時間的拷問、精神的拷問、さらに誘導をしてきたことが分かってきた。

そのあげくの大阪地検特捜部の幹部検事による証拠の捏造が明らかになったのである。
いずれにせよ、この間にメディアから出された決めつけ的な記事やニュース、情報番組は数知れない。

ご承知の方も多いと思うが、その昔、三浦和義氏(故人)が別件で逮捕、起訴され有罪となり収監されている最中に行った通信社、新聞社、テレビ局などのメディアへの本人訴訟による民事訴訟は、実に約500件に及んだ。しかも、その80%以上で三浦氏が勝訴したことは有名だ。

三浦和義氏はマスコミに報道された名誉毀損報道に対し、弁護士を代理に立てない本人訴訟を起こした(民事訴訟のみ可能)。

マスコミに対する名誉毀損の訴訟は476件にものぼる。三浦は訴訟の内80%が勝訴していると主張している(残り15%は時効による却下、5%は三浦の敗訴)。
現在は被疑者の人権を守るために、逮捕や連行の場合は警察は頭から衣服をかぶせたり全体をシートで遮断するなどの措置が、報道機関では手錠にモザイクをかけたりしている。

これは1985年9月11日に警察が三浦氏を逮捕し連行する際に、報道関係者の撮影用に腰縄・手錠姿を撮影させたが、三浦氏はこれに対して、「有罪が確定していない被疑者をさらし者にする人権侵害だ」として提訴し勝訴したことがきっかけとなっている。

小沢氏の場合どうだろうか?

当然のこととして、決めつけの名誉毀損、信用毀損、侮辱的な記事は桁が違う。どうみても起訴に値しない政治資金規正法問題だけでなく、政党交付金の使途に関する決めつけ記事を含めれば、新聞、テレビの大メディア、週刊誌、夕刊紙などで1万本以上が相当するのではないか?
もし、小沢氏が上記の記事や報道内容をひとつひとつ検証し、不法行為(民法第709条、共同不法行為は第719条)により損害賠償の民事訴訟を提起すれば、現時点でも圧倒的大部分で勝訴することになるだろう。まして、強制起訴され公判で当該容疑事実が晴れればなおさらである。
◆民法第5章 不法行為
第709条 故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス
第719条 数人カ共同ノ不法行為ニ因リテ他人ニ損害ヲ加ヘタルトキハ各自連帯ニテ其賠償ノ責ニ任ス 共同行為者中ノ孰レカ其損害ヲ加ヘタルカヲ知ルコト能ハサルトキ亦同シ
2 教唆者及ヒ幇助者ハ之ヲ共同行為者ト看做ス
メディアによる小沢氏への攻撃、毀損行為は過失ではなく明らかに故意であることは間違いないところだ。地方紙などが共同通信や時事通信が配信する記事を転載した場合でも、不法行為が成立するのは三浦和義氏の件で明らかとなっている。

親亀(通信社)だけでなく、子亀(地方紙)、さらにそれらをもとに記事を書いた雑誌や夕刊紙などの孫亀も不法行為の責任を負わなければならない。さらに言えば、無責任に匿名で書き散らすブログなども同じだ。いくら何々新聞が掲載していたからと言ってもその責任は免れないのである。

また不法行為の消滅時効は、不法行為の損害および相手(加害者)を知ったときから3年、不法行為のときから20年である。できればはやめに対応した方がよいだろう。
◆不法行為の消滅時効
不法行為の消滅時効は、不法行為の損害および相手(加害者)を知ったときから3年、不法行為のときから20年である。
不法行為の損害および相手(加害者)を知らなければ、3年の消滅時効にはかからないが、不法行為の損害および相手(加害者)を知らなくても、不法行為のときから20年で、消滅時効にかかることになる。
もちろん、政治家である小沢氏にとって重要なことは、この2年間、「記事は誰が読んでも書かれた当人が黒である印象を与え」られたことである。

小沢氏自身が何度となく述べているように、民主党代表時に事務所を幾度となく強制的に家宅捜査され、当人に対しも何度も確か4度にわたり事情聴取が行われている。

その上で容疑を裏付ける証拠を東京地検特捜部は、見つけられず不起訴にせざるをえなかった案件だからである。こんな例は聞いたこともない。ましてもし、東京地検特捜部の杜撰な捜査やリークがなければ、昨年9月以降、小沢一郎氏は日本の総理、首相となっていた人物である。

半世紀続いた自民党などの実質独裁政権によりできあがった既得権益を手放したくない自民党や大メディア、それに先進国では日本だけ独裁的権力をもつ検察権力が既得権益を手放したくないことは分かる。

かといって、勝手に描いたシナリオで秘書を逮捕したり、事務所の強制捜査後に、証拠をかき集めるという乱暴きわまりない捜査は前代未聞である。

しかも、司法当局は当初から司法クラブに居座る大メディアの記者を子飼い化し、いい加減な捜査、取り調べ情報をリークしまくったのである。まるで戦前の特高警察そのものであり、大本営発表を鵜呑みにし、また分かっていながらウソを書きまくった大新聞がしたことのデジャブである。

周知のように、名誉毀損や信用毀損の法的成立条件はいくつかあるが最終的には顕示した事実が真実であるか、真実性の証明が困難な場合、相当性があるかどうかで判断される。

刑事事件における名誉毀損、信用毀損の場合には、刑法230条の2第1項によれば、名誉を毀損する表現であっても、第一に、それが公共の利害に関する事実に係るものであり、第二に、その目的がもっぱら公益を図るものであり、第三に、当該事実が真実であれば、処罰されないが、当然の事として証明が難しいのは、第三である。

東京地検特捜部が国策捜査と揶揄されるように、意図を持って古い案件について、政権交代直前で小沢氏にかけた容疑で秘書らの逮捕、小沢事務所の家宅捜査、小沢氏本人への度重なる事情聴取で証拠が得られない案件である。真実性はもとより相当性であっても証明するのは容易ではない。

まして、平均年齢が30歳のまったくのシロウト審査員が二度にわたり起訴相当を出したことこそ疑惑を超える。しかも、何から何まで非開示、非公開の検察審査会はどうみても憲法違反の可能性が大である。人民裁判による人権侵害の危険性もある。

本題の小沢氏に関連する疑義であるが、第一に当初の西松建設問題があるが、肝心要の西松建設幹部の証人が前言を覆し大久保秘書裁判は頓挫している、判決どころか検察側は今後の公判維持すら危ぶまれている。

次は佐久間元東京地検特捜副部長が現在収監されている水谷建設社長の供述からはじまった5000万円問題だ。これも社長に虚言癖が指摘され、無理筋である。具体的証拠がまったく見つからない。もともと小沢氏は当時、民主党の幹部ではあっても閣僚でも与党の幹部でもない。職務権限がない。

三つ目は、本題の政治資金規正法違反容疑である。ここ2年世間を騒がした4億円問題で明らかになったのは、最終的に政治資金収支報告書におけるいわゆる「期ずれ」である。

これは民間ではよくあること。非現実的な現金主義をとる政治資金管理における会計のあり方の問題である。

仮にこの「形式」問題で公党の代表(当時)をいきなりお縄とするのは言語道断である。「形式犯」的微罪が問われるなら大部分の国会議員は、その都度お縄となるだろう。

また政治資金で不動産購入を執拗に問題にするマスコミや政治家がいるが、平成19年以前、これはまったく問われなかった。平成19年の法律改正で禁止されているが、小沢氏問題は平成19年以前である。

もとより、小沢氏がそれらにより私財を増やし、私腹を肥やしているのならまだしも、多くの書生や秘書を一人前に育てるためのアパートや宿舎のために合法的に使っているのだから、とやかくいわれる筋合いはないだろう。

歳費で海外に豪華な観光旅行したり、政治資金でキャミソールを購入したり、菅氏のように毎日のように数万円の会食を身内でしていることこそ、政治的、倫理的に問われなければならないのではないか。

そもそも、特捜部の何はともあれ片っ端から捕まえ、家宅捜査してから容疑を考えるトンデモ捜査こそ断罪されるべきであろう。

もし、上記のような疑義だけで現職の政党党首を引っ張るとなれば、自民党の大部分の幹部はひっぱられるだろう。事実、西松建設問題では20名近くの自民党及び自民党系代議士や知事が献金を受けていたからだ。

次いでに言えば、巷では政党交付金の使途問題が執拗に騒がれている。もしこれが問題、さらに違法の可能性が有れば、とっくにこれを容疑事実としてひっぱっている。

このように法、法理、証拠、事実、真実などをまるで伝えず、ただ「政治とカネ」と喧しく騒ぎ続ける人権無視の大マスコミとそのスクラムは、一体どう責任を取る用意と覚悟があるのだろうか?

2010年7月10日土曜日

「経済と選挙」音痴のKY首相に増税を指南した小野教授とは? 青山貞一

 経済音痴で有名な菅首相が副総理時代の今年2月(2010年2月)、内閣府参与として政府に登用した東工大出身の経済学者による「増税と公共事業による雇用創出論」を「つまみ食い的かつ鵜呑み」にし、総理就任直後、消費税10%論を唐突に提案していたことが判明した。

2010/03/06(土) 06:10:29 ID:???0 日経
内閣府参与に小野阪大教授 経済政策を助言
 経済財政政策を担当する菅直人副総理・財務相は5日、阪大の小野善康教授を内閣府参与に任命したことを明らかにした。小野教授は阪大と兼務しながら、必要に応じて菅副総理に経済政策を助言する。昨年末の成長戦略の策定では有識者としてヒアリングに呼ばれるなど、民主党政権との距離が近いとされる。 小野教授は規制緩和など企業活力の向上を狙う政策は人員余剰につながると指摘。環境インフラへの財政支出などが需要を増やし日本経済を活性化させると訴えてきた。一方、生活困窮者の対策を手掛けた反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠氏は内閣府参与から外れた。(00:40)

 2010年6月27日(日)にテレビ朝日のサンデーフロントライン(キャスター小宮悦子氏)に出演した菅直人ブレーンは、何度となく携帯電話で助言、指南を仰いできたことなど、菅直人首相の消費税10%の裏事情を暴露している。

 その学者は大阪大学社会経済研究所長の小野善康教授。下は小野教授の詳細プロフィール。菅直人首相が卒業した東京工業大学工学部の後輩にあたる(菅氏は昭和21年(1946年)生まれ、昭和49年東工大入学、昭和44年卒)。

小野善康氏プロフィール

昭和26(1951)年生まれ
昭和44年4月 東京工業大学工学部 入学
昭和48年3月 東京工業大学工学部社会工学科 卒業
昭和48年4月 東京大学大学院経済学研究科修士課程 入学
昭和50年3月 同課程修了 経済学修士
昭和50年4月 同博士課程 進学
昭和54年3月 同課程修了 経済学博士
昭和54年 4月 - 昭和56年 3月 武蔵大学経済学部 専任講師
昭和56年 4月 - 昭和59年 9月 武蔵大学経済学部 助教授
昭和59年10月 - 平成 2年 9月 大阪大学社会経済研究所 助教授
平成 2年10月 - 平成 8年 3月 大阪大学社会経済研究所 教授
平成 8年 4月 - 平成11年 3月 東京工業大学社会理工学研究科 教授
大阪大学社会経済研究所 併任教授
平成11年 4月 - 平成13年 3月 大阪大学社会経済研究所 所長・教授
平成13年 4月 - 平成21年 3月 大阪大学社会経済研究所 教授
平成21年 4月- 現在 大阪大学社会経済研究所 所長・教授
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昭和55年 9月 - 昭和56年 7月 ロンドン大学LSE 客員研究員 (British Council Scholar)
昭和60年 9月 - 昭和62年 8月 プリンストン大学 客員研究員 (国際文化会館 新渡戸フェロー)
平成 3年 1月 - 平成 3年 5月 ブリティッシュ・コロンビア大学経済学部 客員教授(経済動学、日本経済論担当)
平成 5年 5月 - 平成 5年 8月 世界銀行 客員研究員
平成22年 2月 - 現在    内閣府本府参与

 小野教授が説く「第三の道」は、以前より研究者仲間の間で「現実の世の中では実行不可能な不自然な前提を置いており、人間の行動力学を無視した机上の空論」と批判されてきたものだ。 

★小野善康氏が内閣府の参与に(驚き)? 石渡 正樹ブログ

 小野氏が説く「第三の道」が第三の道といわれる所以は、小野氏は経済学において、いわゆるニューケインジアンであり拡張財政派の立場にある。しかし、氏は昔のケインズ主義者ではなく、ケインズ理論を否定する新古典派経済学理論を用い新たなケインズ経済学を導いた、という異色の経済学者とされている。

 その小野教授は、ロイターのインタビューで、「雇用創出に向け消費税は来年からすぐにでも上げたほうがいいと、現在5%程度の失業率を3%に下げるまで人を雇えるお金が必要だ」また「増税分は借金返済に充てるのではなく、雇用創出とその所得支払いにまわすべきだと主張するとともに、税収の使途は、福祉目的税のように限定しないほうがいい」との見解を示し、増税を首相に提案していた。

 インタビューで第三の道について尋ねられると、小野教授は「過去の自民党政権下で取られた第一の道は、消費者にお金をばらまけばいいというオールド・ケインジアンの発想であり、無駄な公共事業や減税、補助金を指す。第二の道は構造改革そのもので、1990年代以降に生産能力が余っているにもかかわらず生産能力を上げようとした小泉・竹中改革。双方に共通するのは、労働資源を活用することが頭になく、お金を使うか倹約するしかないこと。これでは需要と雇用は生まれない」と述べている。

 さらに 「第三の道は、人に働いてもらうことが目的。そのために資金が必要なら、増税しても構わない。そうすれば当初の増税分は家計に所得として返るので、その時点で家計負担はないし、サービスや設備も提供される。雇用が増加してデフレも雇用不安も緩和されるため、消費が刺激され、経済も成長して税収が増え、財政も健全化していく」とも述べている。

★インタビュー:失業率3%へ消費税上げも=小野・阪大教授 ロイター
★小野教授自身の経済政策論サイト

 菅首相が消費税10%増税を何に使うのかと会見や野党から質問されたとき、国民年金、社会保険など福祉目的税に使うと明言しなかった理由が上のロイターのインタビュー記事から見てとれる。

 もっぱら、小野教授は消費税の増税より、高額所得者への増税を持論としているようだが、菅首相ブレーンとして小野教授は、「消費税は来年からすぐにでも上げたほうがいい」と進言している。

 経済音痴で選挙音痴のKY首相は、こともあろうか参議院議員選挙直前のこの時期に、マニフェストや党内議論を無視し、小野教授の進言を鵜呑みにし、かつ「つまみ食い的」、唐突に消費税10%論を提案した。

 学者が理論としていろいろな政策(問題解決の方向性、道筋)を考え、提案するのはよいとして、国政を預かる首相、総理が、理論中心で実社会での経験がほとんどない(世間知らず)の学者の経済論を、誇らしげに上から目線で公言したことになる。これは政策内容は違うが、小泉首相と竹中教授の関係に似ている。

 KY(空気が読めない)といえばこれほどKYな政治家、それも首相は歴代いないはずだ。結果は、ご覧のようにV字回復した内閣支持率や民主党支持率は劇落してしまった。

 KY学者の小野教授側に問題は多々あるものの、それをつまみ食い的に鵜呑みに、こともあろうか参議院議員選挙直前に気負って公言したKY首相に、民主党は真っ青、昨年夏政権交代を支持した国民、有権者も唖然、茫然し狼狽している。

 覆水盆に戻らずのたとえの通り、V字回復で単独過半数を狙った民主党はKY首相の付け焼刃的な増税論でボロ負けの可能性が高くなっている!

追記

 その昔、大学卒業後、筆者はアジア経済研究所の関連機関に数年いた経験がある。そのとき以来、経済学(経済学者)ほど現実、実社会から乖離し、学者の唯我独尊、トンデモ理論が跋扈している世界はないと言えると感じている。

 当時、研究所に英国からジョーン・ロビンソン教授がこられ経済学の現実との非関連性を徹底的に批判するなど、ラディカルエコノミクスがミシガン大学などで台頭していた。

 学問、研究の自由は大切である。さまざまな理論的研究、モデル、政策を研究し提案することは大切である。しかし、MITの学者とその卒業生が考え出したサブプライムローンシステムや竹中平蔵氏ら新自由主義の経済論など、学者の机上の空論が実経済社会を破たんに追い込んだり取り返しのつかない弱肉強食の「格差社会」を招来させるケースもたくさんある。

 また政治、政局と無関係に唯我独尊の持論を「ときの首相」に助言、指南し、経済音痴の首相が全面的にそれを鵜呑みにするケースも多い。しかも、しっかり分かっていればまだしも、生煮えの中途半端な理解のもと、会見などで首相が世に問うなどもっとての他のはずだ。

 今回はこともあろうか、小野教授の持論である「第三の道」の経済政策をおそらく戦後日本社会でもっとも重要な時期の参議院議員選挙のなかで総理が社会実験しようとしたKY菅直人首相にも驚きの念を隠せない。